成人男性のうち3人に1人が悩まされる「AGA」は、デリケートな話題であるため、他者との情報交換や受診に対して抵抗がある人も少なくないのではないでしょうか。
そこで今回は、AGAの発症のメカニズムや原因、治療法、セルフケアについて解説します。
「最近髪が抜けてきたかも」「そういえば髪のボリュームが少なくなったかな」など、髪に関する悩みを抱えている男性は、ぜひ最後まで読んで参考にしてみてください。
AGAとはどんな症状?まずはセルフチェックしよう

AGAは「Androgenetic Alopecia」の略称で、男性型脱毛症とよばれるものです。
成人の男性に発症する脱毛症であり、20代以降の男性3人のうち1人がAGAを発症するといわれています。
ここでは、AGAの症状や発症のメカニズム、原因について解説します。
AGAとはどんな症状?

AGAの初期症状は次のとおりです。
- 抜け毛が増えた
- 髪が細くなり、ハリやコシがなくなってきた
- 産毛が増えた
- おでこが広くなった
- 手で頭をおさえたときに以前よりも頭皮を近く感じるようになった
AGAでは、生える髪の毛の量よりも抜ける髪の毛の量の方が増えるため、上記のような症状を感じたらすでにAGAが進行している状態であることがあり、注意が必要です。
また、AGAのタイプは進行の仕方から、額の生え際から進行する「M字型」、頭頂部から進行する「O字型(Vertex)」、前頭部全体から進行する「U字型(a)」の3タイプに分けられます。
そして、AGAの進行度合いを評価する際には「ハミルトン・ノーウッド分類」というツールが用いられます。
ハミルトン・ノーウッド分類では、AGAの進行が13段階に分けられています。
Ⅰ型 | 額の生え際が後退しはじめ、薄毛が見られる |
Ⅱ型 | Ⅰ型がさらに進行した状態 額の生え際が後退し、切れ込みが深くなる |
Ⅱ型a | Ⅰ型がさらに進行した状態 額の生え際と切れ込みが共に後退する |
Ⅱ Vertex型 | Ⅱ型の進行に加え、頭頂部にも薄毛が見られる状態 |
Ⅲ型 | Ⅱ型がさらに進行した状態 額の生え際の切れ込みがさらに深くなり、前頭部に髪の毛が残る状態 |
Ⅲ型a | Ⅱ型がさらに進行し、額の生え際と切れ込みが全体的にさらに後退し、前頭部も薄毛になった状態 |
Ⅲ Vertex型 | Ⅲ型に加え、頭頂部にも薄毛が見られる状態 |
Ⅳ型 | Ⅲ型よりさらに額の生え際が後退し、頭頂部に薄毛が見られる状態 |
Ⅳ型a | Ⅲ型よりさらに前頭部が後退し、薄毛の頭頂部と繋がる状態 |
Ⅴ型 | Ⅳ型がさらに進行し、額の生え際が頭頂部に向かい進行し、頭頂部の薄毛の範囲が広がった状態 |
Ⅴ型a | Ⅳ型がさらに進行し、額の生え際と頭頂部が繋がり、薄毛の範囲がさらに広がった状態 |
ⅤⅠ型 | 後退した額の生え際と頭頂部の薄毛が繋がり、側頭部と後頭部に髪の毛が残っている状態 |
ⅤⅡ型 | ⅤⅠ型がさらに進行した状態 側頭部にも薄毛が進行し、後頭部も襟足に近い部分に髪の毛が残っている状態 |
日本人は、生え際に加えて頭頂部の薄毛が進行しやすく、頭頂部の抜け毛が増えてきた・つむじが広がってきたという人は要注意です。
AGAのメカニズムと薄毛になる原因

AGAの発症には、男性ホルモンとヘアサイクルという2つの要素が影響しています。
ヘアサイクルは「毛周期」ともよばれ、髪の成長の周期のことをあらわします。
通常のヘアサイクルは1,000~2,000日程かけて1周することがわかっており、次の3つの期間にわかれます。
- 成長期(2~6年):髪の毛が最も活発に育つ時期
- 退行期(2~3週間):髪の成長が止まり、細胞の自然死により毛包が退縮する
- 休止期(3~4ヵ月):毛包の活動が停止する
AGAでは、このヘアサイクルが極端に短くなってしまいます。
その原因は「DHT」という物質にあります。
DHTは、男性ホルモンであるテストステロンが体内の酵素によって生まれ変わってできた物質ですが、DHTが男性ホルモン受容体と結合すると、髪の成長を止めたり抜け毛を起させたりする脱毛因子が増加してしまうことがわかっています。
このように、DHTがヘアサイクルを乱してしまうことが、AGA発症のメカニズムです。
薄毛になる原因
AGAの原因には、男性ホルモンバランスの乱れ以外に、遺伝やストレス、生活習慣の乱れなども関係していると考えられています。
まず、遺伝についてです。
AGAの原因となる「5αリダクターゼ活性度」「男性ホルモン受容体感受性」のうちどちらか一方、あるいは両方を親から引き継いだ場合、AGAを発症する確率が高くなることがわかっています。
特に、母方の親族にAGAの人がいる場合は、その遺伝の影響を受けやすいことが明かになっています。
ストレスや生活習慣に関しては、今のところ直接的なAGAの原因であるというエビデンスは明らかになっていませんが、ストレスによる頭皮環境の悪化がAGAに影響しているのではないかと考えられています。
AGAのセルフチェック方法をご紹介します。
10個の項目にいくつあてはまりますか?チェックしてみましょう。
- 枕元やシャンプー時の抜け毛が増えた
- 産毛のような細い髪が増えた気がする
- 同年代の人と比べて自分は髪が少ないと感じる
- 前頭部の生え際が後退しているように感じる
- 頭頂部やつむじ地肌が見える
- 脂っこい食べ物が好き
- ストレスが多い
- 睡眠不足である
- タバコを吸う
- 親族(特に母方の家系)に薄毛の人がいる
あてはまる数が多ければ多いほど、AGAの可能性が高まります。
少しでも当てはまったら、専門家による治療をおすすめします。
初期の段階で対策できたら、症状の進行を抑えられる可能性があるからです。
AGA治療の効果と副作用などの気をつけるポイント

AGAは早期発見・早期治療によって進行を止めたり遅らせたりすることができます。
ここからは、クリニックで受けられるAGAの治療法について解説していきます。
内服薬治療はAGAの基本となる治療
AGA治療の代表的なものに、内服治療があります。
「フィナステリド・デュタステリド」は、世界60ヵ国以上、日本でも厚生労働省に認可されている唯一のAGA治療薬。
有効成分であるフィナステリドが、5αリダクターゼという薄毛を促進する物質の働きを抑えこみ、薄毛や抜け毛を予防する効果があります。
また、それだけでなく発毛を促進する成分も含まれています。
ただし、一度内服しただけで効果が得られるわけではありません。
効果を実感するまでには時間がかかることがありますので、最低でも6カ月間程度、毎日内服を継続しましょう。
AGAクリニックの中には、内服薬としてミノキシジルを処方しているクリニックがあります。
ミノキシジルは本来外用薬として処方されるもので、内服は国内でも承認されていないため避けておいた方が良いでしょう。
動悸やむくみ、多毛症などの副作用も報告されているため、おすすめできません。
外用薬治療はミノキシジルを患部に塗布する治療方法
外用薬も、AGAの治療にはよく用いられます。
代表的なものに、「ミノキシジル」があります。
ミノキシジルは、ヘアサイクルの初期である成長期及び休止期に作用し、ヘアサイクルを正常に戻す働きがあります。
また、血管を拡げ血流を改善する作用もありますので、髪にしっかりと栄養分がいきわたるようになります。
臨床実験により発毛効果が実証されており、国からの認可も受けているため、安心できる治療法だといえるでしょう。
HARG療法は自然に髪の毛が生えることを目的とした治療
AGAの治療法には、HARGカクテルという薬剤を頭皮に直接注入し、髪の成長力を高めるHARG療法もあります。
薬物治療との大きな違いは、一定期間にわたって治療を受けることにより、自然に髪が生えること。
HARGカクテルが発毛組織に働きかけ、ヘアサイクルを正常化し、髪の成長を促してくれます。
また、HARGカクテルは髪の成長に欠かせないビタミンBやシステインなどの成分も配合しているため、発毛作用も期待できます。

育毛メソセラピーは有効成分を直接頭皮に注入
育毛メソセラピーでは、薄毛や抜け毛に有効な成分を配合した薬剤を頭皮に直接注入することで、発毛を促していきます。
内服薬治療との併用により、効果を実感するまでの期間が短縮化できることがわかっています。
持病や副作用などにより内服治療に適さない人でも受けられるのも嬉しいポイント。
注入器具の違いにより「パピュール法」「ナパージュ法」「ダーマローラー法」「ノーニードル法」「フラクショナルレーザー法」の5つにわかれます。
どの方法が適しているかは、医師と相談して決めていきます。

植毛には「自毛植毛」「人工植毛」の2種類ある
植毛もAGA治療のひとつの選択肢です。
植毛には、自分の髪を移植する「自家植毛」と、人工の毛を移植する「人工植毛」の2種類があります。
自家植毛のメリットは次のとおりです。
- 拒絶反応や炎症が起こりにくい
- メンテナンスを繰り返す必要がない
- 仕上がりが自然
一方、自家植毛のデメリットは次のとおりです。
- 費用が高額となりやすい
- 発毛を実感できるまでに時間がかかる
- 頭皮に傷が残る
また、人工植毛には、髪が生えてくるまで待たなくてよいためすぐに理想の髪型が手に入れられる、コスパが良いなどのメリットがある反面、皮膚トラブルを起こしやすかったり不自然な仕上がりとなってしまったりといったデメリットもあります。
自分の予算や理想の髪型に合わせた植毛方法を選択することが重要です。

副作用を理解した上で治療を受けよう
AGAには立派な治療法が確立されていますが、副作用もあります。
副作用の症状と、副作用出現時の対処法について正しく理解しておくことが重要です。
内服薬の場合、次のような副作用が起こる可能性があります。
- 性欲減退
- 勃起不全
- 肝機能障害
- 倦怠感
- 食欲不振
内服中に副作用の疑いがある症状が出現した場合には、服用を中止し医師の指示を仰ぎましょう。
外用薬の場合の副作用は次のとおりです。
- かぶれ
- フケ
- 赤み
- かゆみ
皮膚にアレルギー症状が起こる可能性があります。特に、治療を開始したての時期は注意が必要です。
継続して治療を受けられるプランを選ぼう
AGAの治療では、継続することではじめて最大限の効果が得られます。
予算を踏まえ、継続できる治療法を選択しましょう。
それぞれの治療法にかかる費用の相場は次のとおりです。
- 内服治療:月に10,000円程度
- 外用薬治療:月に20,000円程度
- 育毛メソセラピー:20,000円~50,000円程度
- 自家植毛:100グラフト100,000円程度(総額500,000~1,000,000円になることも)
- 人工植毛:100グラフト50,000円程度(定期的なメンテナンス費用も必要)
まずは、手の出しやすい内服や外用薬治療からはじめて、効果が不十分であった場合に他の治療法へとステップアップしていっても良いかもしれませんね。
AGA治療はオンライン診療を活用しよう
「薄毛が気になるけれど病院に行く時間がない」「毎月病院に行くのは難しい」「薄毛治療専門病院に行くのは恥ずかしくて気が引ける」そのような悩みを抱えている人は、ぜひオンライン診療を活用してみてください。
オンライン診療では、病院受診と同じような問診や治療の提案がすべてオンライン上で解決し、必要な薬剤が自宅へ届く仕組みになっているため、時間を確保しづらい人や病院に行くのに抵抗がある人にピッタリの診療方法です。
診療の予約に関しても、インターネットやLINEから確保できることが多いため、一度チェックしてみましょう。

AGAが心配な方はまずは薄毛対策を万全に

AGAの治療法について解説してきましたが、AGAの進行を食い止めるための薄毛対策についても少し解説します。
頭皮は清潔に
自分でもできる薄毛対策に、頭皮の清潔を保つことがあげられます。
余分な皮脂や汚れは脱毛の原因となってしまいますので、毎日シャンプーを使って地肌をしっかりと洗うように心がけましょう。
その際、地肌を傷つけないように、爪ではなく指の腹で洗うことを心がけましょう。
薄毛が気になり出したらまず育毛剤で予防
薄毛が気になり出したら、まずは育毛剤を使ってみるという方法もあります。
育毛剤は、今ある髪を健康に保つ効果があるため、髪のハリやコシを増すことで薄毛を目立ちにくくしたり、髪が丈夫に育ちやすい環境を作り出すことが可能です。
市販のものですので、診察も必要なく、お手軽な値段のものを選べるのも、試してみやすい理由の一つ。
ドラッグストアやネットショップで購入が可能です。
「髪のボリュームがなくなってきた」「髪が細くなってきた」という人は、まずは育毛剤からトライしてみることをおすすめします。
育毛剤と似たものに「発毛剤」もあります。
発毛剤と育毛剤はどちらも薄毛対策に使われるものですが、使用目的や効果が若干異なります。
発毛剤は、ミノキシジルが含まれているものが多く、髪の毛包を活性化させ、髪が抜けてしまった地肌から再度髪を生やす作用があります。
内服薬はちょっと抵抗があるけど抜け毛や薄毛をなんとかしたいという人におすすめです。
まとめ
AGAは進行性の脱毛症のため、薄毛や抜け毛が気になり始めたのに放置していると、薄毛がどんどん進行して頭皮がはっきりと見えるようになってきます。
また、反対にちょっとした抜け毛で過剰にAGAかどうか心配してしまい、精神的に不安な状態で生活をしている人も多く、AGA治療の受診をしたけどAGAではなかったという人も多いです。
AGAは適切に治療を受けることで発毛を実感することができる症状ですので、抜け毛や薄毛が気になっているという方はまず病院で診察を受けることをおすすめします。
オンライン診療を行なっているクリニックも多いので、忙しい人や病院に行くことに抵抗があるという方はオンライン診療で受診してみましょう。